国家の品格、いいと思うんですけどだめですか?

どうですか?

■感想

概ね同意。一部強引な論理や「欧米=悪 日本=善」的記述があるけれど、著者の言い分の6割は同意できる。ということは4割には同意しないんだけど(笑)それよりも6割の共感によって得られたものの方が全然大きいです。心の中で薄々感じていたことを、言葉で具現化してくれただけで十分価値のある本です。

■同意した部分

道徳と歴史を学ぶ必要性。「目に見えないものこそ重要だ」の法則通りっすね。僕は高校の時、センターの受験科目で歴史系を捨てて政治経済を専攻した。というのは日本史・世界史は暗記量が多いし何の役にも立たないが、政治経済は少ない暗記量で点が取れて将来役に立つと思ったから。とても合理的な判断だったと思う。けど、よく考えればNARUTOヲタの外国人に

「ちょ、あんたの国の忍者の起源教えてよ」

と言われて答えられないようじゃだめなんじゃないか?この本を読んでそういう考え方になった。だって俺らが外国人にその国の事聞いて答えられなかったら、がっかりするというか失望するというか。

「なんだ、この国の奴らは自分の国の歴史も知らないのか。きっと愛着がないんだろうな」

と思っちゃうわけである。特に日本の歴史に興味を持つ外国人も多く、彼らは「もし日本人と友達になったらいろいろと日本の文化について教えてほしいなぁ」と思っているはずなのである。そこで日本人が自国の歴史について無知ならばがっかりすると思う。そーいうのは良くない。

ま、だからといって大人になっても歴史の勉強をし続けるべきだ、というつもりはないけど、少なくとも「歴史の勉強は生きていく上で不要」という僕の考えは違うんじゃないかと思った。

後は道徳ですかね。金銭は二の次として勤勉に働く日本人が外国で驚かれ、評価される話があるけれど、そーいう「美談」は重要なんじゃないかと。外国人とは違った日本人の良さ、遠慮の心とか風情を感じる民族性を見直さなければいけない、と思いました。「日本人はいい奴だ」というイメージを維持することは合理的に考えてもメリットがあるしね。

「世の中には理由では説明できない大事なことがあって、それを押し付けることは正しい」と言う主張はもう一歩踏み込んで欲しかった。教える側が自信をつけても、教えられる側には何の解決にもなってないんだよね。まぁ理論より情緒が大事と主張する本書的には、「理論で説明できなくて当然」なんだろうけど、この主張を真に受けて子供に押し付け教育するのは良くないと思う。詳しくは教育関連本をご参照ってとこですか。

■同意しない部分

たくさんあるw。

  • 「情緒」の要素を経済にまで持ち出していること。具体的には筆者は「時間外取引で株を取得するなんて卑怯な行為。情緒教育をやっていればこんな人間は生まれない。」というニュアンスの意見を言っているが、ルール=論理で制限しないといけない世界もある。なんでもかんでも情緒で片付けようとするのは違う。
  • 「日本はこうあるべき」論や「日本は素晴らしい」論。例えば日本には四季がありそのおかげで日本人は他民族より美的感覚に優れている、という主張だけど、それってたまたま日本人が日本という四季のある国に住んだから美的感覚に優れてるだけなんじゃん?とか思ったり。だから「日本に住むことによって伝統的に培われた美的感覚」というのなら分かるけど、著者の口ぶりを見ると「日本民族そのものが元々能力が高い」という方向に話が進んでいて違和感。
  • 欧米批判する時だけ妙に細かい事例を出してきたりと、自分に有利な情報ばかり出しているような印象を持ってしまう。講演会の話を纏めたものだから仕方ないけど。

などなど。主張が過激な分、突っ込みどころは多いですよ。

■けど

やっぱりこの本、良書だと思うのだ。というのは自分に新しい気付きを与えてくれたから。確かに間違ってたりうさんくさい部分もあるけれど、毒にも薬にもならない本よりは、読んだあと自分の中で何かが生まれる本の方が全然いい。僕はこの本を読んで視野が広がった。良かったです。

■他の人の書評について

で、Amazonでは批判的なレビューが多いんだけど、真正面からこの本を批判してるのって少ないんですよ。一部分だけを批判しての揚げ足取りっぽいというか。で、調べてみるとこの本と作者って反ホリエモンの代名詞的な存在として各メディアに取り上げられてるんだよね。それに反発したホリエモン信者+ネット世代が批判的なレビューを書いてるのかな?と邪推。それに「本の内容が間違っている派」と「英語教育は必要な派」を加えた三派がこの本の平均得点を押し下げているのかも。

一つだけ批判的なレビュアーに反論すると筆者が本の中で言っている「情緒」というのは「欲求」の事ではなく、日本人の持っていた「武士道」「もののあわれ」等の事。これを無視して「日本人は情緒に任せて、感情の赴くまま戦争を始めてった。よって情緒ではなく論理に頼るべき」とか主張しているのは筆者の言う「情緒」の意味を読み取れていないと思う。

とにかくAmazonの平均得点ほど評価低くはないです。まぁ興味あるなら本屋で1章だけ立ち読みして面白そうだと思ったなら買えばいいんじゃないかな?

book_cover
国家の品格

※評価はともかく、この本が注目されてるって事はそれだけ日本のことを気に掛けてる人がいるということなんだよね。