25歳で選挙に出馬した友達の話

彼とは中学・高校の同級生だった。中学の時は友達の友達といったくらいで絡みが少なかった。ああそういえば、1年くらいテニス部に所属して一緒に活動したっけな。始めたのが遅かったのでレギュラーにはなれなかったけど(俺は3年間所属して補欠)。印象的だったのが、中学生の分際で卒業ライブと銘打ってライブハウス借り切ったことだ。当時ライブはおろか、カラオケも不慣れだった俺は大音量と迫力に圧倒されたっけな。

高校では同じ中学からの進学組のよしみで自然に話すようになる。クラスは一回も同じにならなかったけど、同じ軽音楽部に所属して対バンもやった。彼のパートはボーカル+ギターでギターソロも自分で弾いてたかな?とにかく自分が目立ちたかったんだと(俺が勝手に)思う。

そういえば高2の時の修学旅行で軽音楽部の出し物があったんだけど、あいつのバンド、2曲のところを勝手に4曲くらい演奏して大ひんしゅくかってたな。お前だけじゃなくみんな女子の前でかっこつけたいっての!それで悪びれもしなかったので部員の神経逆撫でしちゃって険悪な雰囲気になった記憶がある。少なくとも友達の俺でも腹立ってたから相当なものだろう。


転機は高2の秋。俺は軽音楽部と生徒会を兼ねてた(つかこっちがメイン)んだけど、毎年の生徒会長擁立に苦労してた。だってうちの高校ってみんな生徒会活動に興味なくて会長やりたいやついなかったんだもん!なので、名前だけで借りて会長になってもらったり、生徒会員から会長を出したりで大変だったのだ(まぁここらへんは闇歴史なので割愛)。

その年も俺が先生から「なんとかして生徒会長候補探してくれ」と言われて彼に白羽の矢を立てたわけだ。それが間違いの始まりで、その年の立候補者は彼だけで演説後に形だけの承認投票をして選挙終了のはずが、壇上で

「この学校は腐ってる!先コウは屑ばっかり!」

とか言い出しやがった。俺はあの場を一生忘れない。あの当時カメラ付きケータイがあったなら、すぐさま動画に取ってyoutubeに投稿したくらいだ。…しかし、その場は盛り上がったもののうちの母校は進学校で先生と仲の良い生徒が多かったので逆効果。生徒会長承認選挙史上、過去最低の支持率で承認されたのでした。

生徒会長としては最悪な部類で、現実を見ないで理想ばかり言う。何かをするより彼への説得の方が労力使う。それに加えて「先コウ屑ばっか」とか言っちゃったので、先生の目が厳しくなって生徒会までとばっちりですよ…。そのくせ本人は他人に苦労かけてることをまるっきり自覚しないんだから、まるでお山の大将的存在である。

そんな彼も任期1年間で(ある程度)丸くなり、無事に会長職を全うした。生徒会は最後まで振り回されっぱなしだったけど、高校最後の文化祭で生徒全員がグラウンドに集まって盛り上がれたので良かったかな。こういうイベントは例年にないもので、俺らも感動したし先生方の評価も高かった。…結局和解してんじゃん!

■そんなわけで

彼が政治の世界を志したのを知っても特に驚かなかった。俺が思うに、政治家なんてものは彼のように頭のネジが(いい方向に)2,3本外れてないとやってけないと思う。印象的だったのが、生徒会時代に俺が物凄い悪意を持って彼を責めても一向に笑顔を崩さなかったことかな。俺は怒ってて彼は笑ってる。そんな彼をやり込められなくてますます腹が立ったもんだが、今思えばそこが彼のいい所だと思う。


■余談

卒業してから何年か経って生徒会室に行った所、とても明るい雰囲気になっていた。あの時頭が固かったのは俺たちの方かもしれない。そして今も彼は理想を追い求めているのだ。