「サブプライム後の新資産運用」読了

タイトルに釣られたのもあるけど、「この作者の本は当たりが多い」というネットのレビューが購入を後押し。で、この本インパクトがありすぎてどこから書いて良いのか…という感じなので、キモである「国際分散投資と長期資産運用はの危険性」について考察してみます。

※この本は「今までの前提」を知っておかないと話しについていけません。とりあえず「お金は銀行に預けるな」あたりを読んでおけばOKだと思います。

■国際分散投資の危険性

一般的に言われている国際分散投資(≒資産4分法)の利点は

  1. 国内と海外に分けて投資することで、例えば日本の「失われた10年」のような時があっても海外の株式に支えられるのでリスク分散できる。
  2. 株式と債権は逆相関関係にあるので、リスク分散できる。

の2点でした。しかし1点目に付いては金融のグローバル化により同じ商品(株・債権・商品)なら国が違っても同じ値動きをする傾向が高く、わざわざ国内・海外に分けて投資をする必要性が低くなっていると主張しています。

これは全く僕の実感と正しく全面的に同意します。だって今の日経平均はアメリカの株価に連動してるし、ガソリンにしてもNY原油の値動きとほぼ連動。わざわざ国内と海外に分ける必要な感じられません(この本では株式は国内を買って、為替リスクは外貨預金でカバーするよう推奨している)。

2点目ですが、「仕組みを理解するのが難しく、リスクの割りにリターンが少ない」という理由で筆者は債権を勧めていない。が、債権がダメ(※)と言っているだけで高リスク資産の株式と低リスク資産を組み合わせる事については資産4分法と同じなので、深く突っ込む所ではない。

※代わりに外貨預金を勧めている。個人的には外貨MMFや低レバレッジFXもいいと思う。

■次に長期資産運用の危険性

こっちの方が引っかかったので詳しく。


・これまでの前提その1:短期的に見れば上下するかもしれないが、株式を10年20年と持ち続けるだけで儲かる。

これに対してこの先も世界経済が成長し続けるとは限らないという指摘をしています。「いやいや、今まで成長してきたからこれからも大丈夫でしょ」と思うかもしれないけど、例えば日本に限って言うと1989年付近のバブル前後の株価、または2000年付近のITバブル前後の株価をまだ回復できずにいる。ちなみに日本はここ数年間戦後最長の景気拡大が続いていた。ここで回復せず何時回復するんだ、と考えると今後バブル期の株価を回復する事はないんじゃないかと思えてしまう。まぁ少なくとも「日本株はここ20年間上昇傾向にある」とは言えない。

「そのための国際分散投資でしょ」という意見もあるが、例えば外国が日本のような事態に陥いる可能性は?ダウ平均は2000年までは一貫して上昇傾向にあったが、2000年と2008年を比べると約5%しか成長していない

それなら「他の成長要素のある国に」ってなるけど「考える」という要素が入った時点で「国際分散投資をしてほったらかし」という戦略ではなくなってしまう。(まぁMSCIコクサイの比率が上手い事変わってくれるよう期待する方法はあるけど)

僕がインデックス投資を知ったとき「ほったらかしだけで本当に儲かるのか」と思って調べたら、やっぱり儲かってなかったw それなのに各所で「一番リターンが見込める投資法」って絶賛されてて疑問に思いつつインデックス投資してたんですが、そのもやもやにこの本がスカっと解答を出してくれました。今はこの先ほったらかしインデックス投資では昔ほどリターンが得られないと強く思ってます。

ほったらかしインデックスの代わりにこの本は「捉利」という考え方を提唱しています。…といっても難しいことではなく「世界全体を一つの経済と見て、お金が流れている商品に乗っかっていく」方法。乗っかり方も書いてあるけど長くなるので省略。


・これまでの前提その2:複利効果が期待できるので、やはり株式を10年20年と持ち続けた方が得だ。

この本は「確かに複利効果は重要だけど、明らかに下落するのが分かっているのに持ち続けるのはおかしい」と主張。まぁそりゃ当然なんだけどこれは「明らかに下落するのが分かっている」のレベルによると思う。長期保有派は「前提として相場は予測できないので、いつか分からない上昇局面のために株式を持ち続ける」というスタンスだから、著者の「相場の予測はできる」という前提と噛み合わずナンセンスと言える。

けど「インデックス投資に決めたから石にかじりついてでも投信解約しない!」と凝り固まるのは良くないのではないか。どう考えても(というと長期保有派から反論がありそうだが)2008年中に日本の株価が回復しない。それなら最低でも年末まで手元の株式を現金化して資産の目減りを減らす方が複利効果に期待するより賢いと思う。

まぁ結局「相場は予想できない派 VS 相場は予想できる派」の戦いで、例えるなら「ロト6の当たり目に法則はある派 VS ない派」の戦い。両者の交点はないのかもしれない…。


■この本のちょっと残念な点

  • 「メイン主張」の間に挟まれる「サブ主張」について突っ込みどころが多い点。例えば外貨預金や投資信託/ETFの売買手数料、日本の地震リスク(それを言うなら他国の地学的リスクも調べて書かないと)について。
  • 「証券会社の使うグラフは当てにならない」と主張しつつ、自分の意見を補完するためにグラフを使っているので「もしかしてこれは筆者の都合がいいように作られたグラフなのでは?」と疑ってしまう点。

■この本が普通に役に立つ点

  • 各動向を抑えるための指標が書いてある点。例えばアメリカ経済なら雇用統計、商品相場ならNY原油など。これは著者の意見に賛同する・しないに関わらず便利。

■まとめ

投資初心者なりに判断した結果、この本に賛同する要素の方が多かったです。この本Amazonの評価も絶賛だしブログ見て回っても賞賛している人ばかりなんですよね。正面から反論できるのはバイ&ホールド戦略のインデックス投資家なんでしょうが、興味ないんでしょうか?著名なブロガーさんの反論を聞いてみたいところです。

あとこの本はインデックスファンドやETFを否定しているわけではありません。むしろ資産運用にはパッシブ系商品を推奨しています。筆者が否定しているのは「考えもせずずっと同じ金融商品を持ち続ける事」なので、インデックス投資派にもお勧めできる本だと思います。つかこんなに長い書評をかかせるほど名著。