FF13クリア後の感想。主に世界観設計とストーリー(ネタバレあり)

12/23(水)の22時ごろ、FF13をクリアしたのでクリア後の感想でも書きたいと思います。今回は主にストーリー部分について言及します。ま、そんな悪意のあるネタばらしはしませんが(一番最後でエンディングについて言及してます!注意!)、未クリアの人、少なくとも11章まで進めてない人は読まないほうがいいんじゃないかなーと思います。前回ネタバレなしのFF13考察を書いてるので未プレイの方はそちらにどうぞー。
[FF13を50時間ほどプレイした感想(ネタバレなし)](http://prius.cc/d/20091221_ff13.html “FF13を50時間ほどプレイした感想(ネタバレなし)")

### その前に。「FF13は一本道過ぎてつまらん!」論争について
これ、前のエントリ書いてからも考えてました。てのは、よく考えれば**過去のFFも十分一本道ストーリー(FF10とか)だった**のに一本道って感じがしなかったんですよね。なのになぜFF13は一本道に感じるんだろう?
で思ったのは**FF13には街がない。ダンジョン→イベント→ダンジョン…の繰り返しだから一本道に感じたんじゃないかな?**と。FF10とかは一本道の途中に街がある。買い物もできるし街の人と会話してぶらぶらできる。**ストーリーチャート上は一本道でも、ストーリーを進めない自由があったんです。**FF13はその点、**進めさせられてる感**が半端なかったように思えます。
### なぜダンジョンを一本道に作ったのか。
これ、**面倒だったとか開発が間に合わなかったとかそういう理由じゃない**と思うんです。だってダンジョンに分岐つけて終点に宝箱置いとくなんて大した手間じゃないでしょう。ということは、開発陣は最初からあえて一本道に作った。じゃあなぜ一本道にしたのか?というと
1. グラン=パルスに初めて来た時のギャップを出すため。
2. ファルシに"飼われている"コクーン内部はダンジョンも一本道というストーリー上の演出。
3. 分岐が多すぎて面倒!というライトユーザー層への配慮。
かなぁと。ただこの3つのどれが正解だったとしても、**あれだけ長い一本道ダンジョンはやっぱり失敗だった**と思います。
確かに1番2番については、演出の狙いは分かります。初めてグラン=パルスに降りたときは「すごい!超広い!自由だ!」って興奮したもん。ただ**ギャップを出すために「序盤」一本道にしよう。と決めたとして、その「序盤」を3時間でも5時間でもなく20時間にしちゃったのは、間違いだったんじゃないかなぁ**と思います。
3番についてですが…。確かにダンジョンで迷うよりストーリーを進めたいってプレイヤーもいると思います。…が。だからって完全に1本道にするとか**ダンジョン楽しみにしてる層を切り捨て過ぎでしょう。**ちょっとくらい分岐あってもライト層も我慢してくれるだろうし、もうちょっと幅広いプレイヤー層に対応してほしいものです。
あ、あと「一気にやるから一本道に感じるのであって、少しづつやれば問題ない」ってコメントもあったけど、確かにそれはそうかもしれない。実際、発売してから時間が経つにつれて「一本道と感じない」って感想が増えてきた気がします。一気にプレイした僕は今となっては分かりませんが。


### 世界観「設定」とFF13世界での「現実」の乖離
ここからはFF13の世界観設定について文句を言っていきます。
結論から言うと僕はFF13の世界に引き込まれませんでした。ストーリーが進んでも、一緒について行けなかった。ここではその理由をいくつか考えてみました。
#### 世界に入り込む前にストーリーが進んで置いてけぼりにされる

「天空に浮かぶ楽園「コクーン」は人類の守護者「ファルシ」の祝福で繁栄していたが、下界「パルス」から訪れた人類を憎むファルシののろいで、その平和が打ち破られる。人々が次々に魔性の先兵に変えられていく中で、「ルシの烙印(らくいん)」を刻まれた主人公たちが、世界を守るために立ち上がる」

この設定はいいな、と思うんだけど…。実際にプレイしてみるとその世界を実感し辛い。というのは**FF13の世界観ってのは複雑で文章だけでは感情移入し辛いのでストーリーや映像でしっかり引き込んで欲しかったのに、全然未説明のままストーリーが進むから。**FF13世界を実感させてくれる前から「登場人物の心情」にスポットを当て過ぎてて、結果、登場人物にも感情移入しづらい状況になってしまった。
なのでストーリー最初の「パージ政策」も、こっちは**「下界のファルシ」ってのがコクーンにとってどれだけ有害で、なぜ恐怖の対象になっているのか実感できてない**ので、「え、いきなりそこまでってやり過ぎじゃね?」とついていけないし、スノウがセラを掘り出すために危険を冒してあの場所に留まったのも、こっちがそこまで感情移入できてないから「いや、早く逃げろよ」とか思ってしまうのです。
#### 世界観設定とFF13世界の人物の行動が矛盾してる
まぁ100歩譲って「下界のファルシ」がコクーンに取って有害だから、ちょっとでも関係ある人は排除する!って世界観に納得するとしよう。そうなると逆にいろんな矛盾点が出てくる。まず「軍関係者はパージを除外されている」という、ライトニングがパージ列車に乗り込む時の兵士の発言。聖府は下界やファルシについてよく分かってない、だから関係ありそうな人は取りあえず排除してるという設定なのに、**なぜ軍関係者だけ安全圏と認定できるのか?**
ファルシが聖府関係者をルシに任命するかもしれない。さらに言うなら、「下界のファルシ」は前からボーダムにあったんだから、一度でもボーダムに行った事のある人の追跡調査をするべきだし。結局「パージ政策」だけじゃ下界からの恐怖は完全に排除されないのである。
また「ルシ」に対する接し方にも疑問。事前設定では「ルシはファルシによって任命される人類の敵」。だからパルムポルムの兵士みたいにルシは即射殺ってのは自然な発想。パージ政策の事も合わせると、FF13世界では下界やルシとちゃんと向き合わずに臭いものに蓋をしようって考えが主流になってると考えられる。
だから**ホープの父親がファルシやルシの事が良く分かってないのに、いきなり「ここはお前の家だ」なんて言えるわけ無いんですよ。**だってFF13世界ではルシになったら終わりなんです。しかもルシについては何も分かってない、目に見えない恐怖があるのに加えて、400年ぶりに出現した未知のものなんです。例えば「ルシに触れれば自分もルシになるかも?」「ルシにならなくても、ファルシに目をつけられて次のルシに任命されやすくなるかも」とか**新型インフルエンザ出始めのような過剰反応になる**のが自然だと思う。
だからあの場面も父親との和解前に、父「近づいて大丈夫なのか?」ホープ「大丈夫だよ、ファルシは近くにいる人間じゃないと任命できないみたいだし」父「そうか…」みたいなやり取りで。ワンクッション置いてほしかった(終盤のスノウのイベントもそうだけど)。同じく、ファングがシドと行動を共にするのだって不自然。シドは実はアレだったからいいとして、お供の兵士とかは疑問を抱く、というか**ルシに近づくなんて怖い!自分もルシになるかも!**とか思うでしょ。
とにかく**「ルシは恐怖の対象」って設定とストーリー展開の辻褄が合わない。**事前情報で「ルシというのは得体が知れない呪いのようなもの。感染経路も分からないからむやみに関わらないほうがよい」って世界観を想定していた一方で、ルシに普通に接しているFF13世界の人がいた。
#### ストーリー上の軸がない。
※注意:ここらへんからネタバレ激しい
ていうか軸はあるんだけど細い。なぜ細く感じるかというと、
1. ストーリーを感じさせてくれるのはイベントシーンだけでダンジョンはストーリーと無関係のものが多いから。
2. 張られる伏線がストーリーとは無関係な上に回収されないから。軸に複線が絡まって束にならず、複線がささくれみたいになっている。
3. ストーリー上、当然説明させるだろう点が説明されず、ストーリーに納得感が無い
この3点。まず1点目は前回のエントリで指摘したとおり、4章~6章のダンジョンなんてストーリー上はなんら必要ないものだし、10章のフィフス・アークもバルトアンデルスちゃんが意味ありげに誘導した割には特に意味の無いダンジョンだったし。…いや、てっきりパワーアップに繋がるキーアイテムとかイベントがあると思ったんだけど、まさかダンジョン内の敵と戦ってレベルを上げろ、って意味だったんだろうかw さらに言うなら11章はオルバ郷に手がかりを求めに行くんだけど、**途中にあんなに長いダンジョンいらんだろ!**振り返ると、ダンジョンの半分くらいがストーリーと無関係でしたね。
理由その2。FF13ではいろんな複線が張られるんだけど、そのほとんどが結局未回収・未解決のまま終了します。例えば「神」「女神」の存在。序盤はファルシが人間にとって神みたいなものって設定だったけど、ストーリーを進めると、実は人間とファルシは神に見捨てられたみなしご同士で神を呼び戻すのがファルシの最終目的らしいと。へー、じゃぁ神ってのが最後にストーリーに絡んで、バルトアンデルスはいろいろとライトニングの邪魔してるけど実は別の目的があるのかなーとか思ってたら**ないし。**
あとは「下界のファルシ」と「コクーンのファルシ」について。下界のファルシとコクーンのファルシは敵対関係って事前情報があって、けどどちらのファルシも「神」を呼び出す目的は同じ、コクーンのファルシはコクーンを作って人間を"増殖"させる役目、下界のファルシはコクーンを破壊して人間を一気に殺す役目に分かれていた。けど「神」関連の話によると、元々この世界にコクーンはなくて、ファルシも人間も一緒に下界で暮らしてた。「神」がどっかいったからコクーンを作って「神」を呼び戻そうとした。つまりファルシは元々下界とコクーンに分かれてなかった。となると下界のファルシとコクーンのファルシの刻印が違う理由に説明がつかない。結局この複線は説明されないまま、ストーリーは終わってしまう。(※)
細かいとこではロッシュ中佐とナバート中佐が士官学校の同期って設定は全然生かされないとか、「セラが見たビジョンは自分たちと違うはず!バルトアンデルスは嘘をついてる!」と言った割には特にフォローなし。何かある、と期待させて何も無いパターンが多すぎた。
※断章によると、下界のファルシとコクーンのファルシの創造神は違うらしいが、はっきりしたことは分からず。。
理由その3。例えばファングの焼け焦げた烙印の意味。ルシとしての任務を果たせばそういう状態になるのか?けど任務果たしたらクリスタルになるんだよね?じゃあクリスタルになった後、復活すればああいう状態になるのか?とにかく烙印を焼け焦がす条件があるはずだから、それを探しても良さそうなのに探さない。後で焼けた烙印の意味が分かるのか?と思ったけど結局解決されない。
これを「説明不足」とするか「プレイヤーの想像力に任せた」とするかは自由だけど…。
#### ストーリー上の謎がない
複線でたくさん含みを持たせてるのに、メインストーリーは単純。敵の組織のボスが実は悪者で目的は**世界を無にして再生する**っていう昔ながらに手垢がついたもの。んでそいつが普通にラスボスで真の目的とかは特になし。
FF6以前はともかく、最近のFFは「謎」を意識させつつストーリーを進ませ、終盤あたりでその「謎」を利用してストーリーを盛り上げるってのが上手かったと思う。例えばFF10は「シンを倒す」って目的があって、けどプレイヤーに「きっとシンを倒して終わりじゃないんだろうな…」と予感させておいて、その期待通りにストーリーが展開した。その点、FF13は意外性がなくちょっと期待はずれでした。
※というか俺の発売前予想では、ナバート中佐あたりが実は裏で暗躍しててダイスリー代表を暗殺した後、第2・第3形態くらいまで変身してプレイヤーに立ちはだかると思ってたのに、めちゃくちゃかませ犬じゃねぇかwww
#### ストーリーが行き当たりばったりで、登場人物の行動に合理性が無い
※注意:ここらへんからネタバレ全開
あ、言っちゃった。けどそう感じるよ。バルトアンデルスがフィフス・アークやグラン=パルスにライトニングを飛ばしたのだってそうだし、そもそも下界のファルシがあの4人をルシに任命したのだって謎でしょう。ライトニングはともかく、他の3人は一般人なんだし。それならその前に異跡に突入した兵士を全員ルシにすればいいじゃない。ルシに任命できる人数に制限があるって設定はないんだから。
というか**バルトアンデルスの考えが適当すぎる。**出会うたびにいちいちプレイヤーの前に立ちふさがって、回りくどいことして…。ラグナロク候補のライトニング達を強くするため、ってただザコ敵と戦わせてるだけじゃねーかYO!それなら最初からオーファンの所に案内しろっての。希望を与えた上で絶望させるって狙いにしては大掛かり過ぎる。**作りたいストーリーに合わせて登場人物を動かしているから、行動理由に合理性がなく感じる。**
#### ラストがご都合主義過ぎ
ほんとはもっとストーリーで不自然な点があったんだけど、**ラストシーンに全部上書きされちゃいました。**それほどまでに理解不能。まずですね。**オーファン倒しちゃだめなのになんで倒してるのwww**と。オーファンを倒してコクーンを滅ぼすってのはバルトアンデルスの真の狙いなのに、なんで協力してるの、と。んで、オーファン第1形態を倒した後、ファングとヴァニラ以外がシ骸になる→なぜか復活するという超展開。あれ?一度シ骸になったらもう復活できない設定じゃなかったっけ?
ともかくオーファン第2形態を倒すんだけど、案の定コクーンは崩壊の危機(←主人公一行のせい!)。ヴァニラとファングがいたからいいけど、そうじゃなかったらバルトアンデルスの狙い通りだったし…。この時点でかなりぽかーん状態。けど極めつけはラストシーンのセラとドッジが一緒に歩いてくる絵。あれを見た瞬間、**このFF13の脚本を書いた人とは合わないな**と思いました。
まず2人はクリスタルになってるはずなので、あれだけ高いところから落ちて無事なわけはない。仮に無事だとしても他の一般市民と同じく軍用機に乗って非難してるはず。最後に、セラとドッジは面識がないので2人で一緒に歩く理由が無い。つまり**あのラストシーンにはかけらも合理性がないんです。**
さすがに脚本書く人もそれは分かってて、けどあえてああいうラストにしたんだと思う。つまり**合理的な過程を見せるより、あの絵を描く事を優先した。**これが**FF13ストーリーのあいまいさ、後付設定さ、合理性のなさ**を端的に表してると思う。
### まとめ
細かい設定・世界の枠組みが決まらないままストーリーが進んでいくのが、僕がFF13に不満を持つ最大の理由であり、その象徴があのエンディングのラストシーンです。**FF13は映画とか行って「ラスト超良かった!感動した~♪泣いちゃうね…」とか思う人にはぴったりのストーリーで、その人の横で「けど中盤で○○が××な行動取ったのって○○の心情に合ってないよね?」とかツッコミ入れたがる俺みたいな人には向かないストーリーだと思います。**
※(2010/2/17 追記)たくさんのコメントありがとうございます。全部読んでます。なお現在、コメント欄で上手く改行ができなくなっております(改行を2つ連続で入力すると反映されます)。時間のあるときにデザインを修正して、コメント内容を変えずに改行を反映させようと思っております。よろしくお願いいたします。